Pocket

2013年度末、ゴールドマン・サックス社の投資家カンファレンスで同社のアナリストであるマットファスラー氏(Mr. Matt Fassler)はトラクター・サプライ・カンパニーのことを『最もユニークで、他では類を見ない成長を遂げている小売業(ホームセンター)』と称賛した。

Tructor Supply 001 Tructor Supply 002

トラクター・サプライ・カンパニーはテネシー州ブレントウッドに本社を持つファーム&ランチに特化したホームセンターとなる。
2013年12月31日時点で全米内48州に1,276店舗を営業展開。
標準店舗サイズは15,000~19,000スクエアフィート(約1,400~1,765㎡=約422~534坪)で、都市郊外および農業地区に出店。
販売商品ラインはハードウェア、工具、農耕用品、農業機械、作業着や作業靴、季節商品となるが、特徴としては家畜やペットおよび家畜の餌も店舗で販売している。

2013年度(2013年12月31日決算)は売上$51億6,500万ドル(約5,165億円)、純利益$3億2,820万ドル(約328億円)を計上し、過去5年間を見ても毎年10.19%~16.34%の増収、18.7%~40.35%の増益、純利益率5%~6%と、順調な経営を行っている。
店舗数も、2014年度には新規100店舗、2015年度にはさらに100店舗のオープンを計画している。(すでに2014年度の新規オープン店舗店長も決定済みと言うから驚きだ。)

その成長の要因はいくつかあるが、
① 商品構成
特異な商品構成をしており、家畜および家畜の餌の商品構成比率が42%を占めており他では類を見ない。
どんなに不況になろうとも家畜には餌を与え続けなくてはならない。
ステディーな売り上げが見込める。
Tractor Supply

② 店舗での修理・修繕
農耕具や農作業機械に関して、修理・修繕は各店舗でを行っている。
これにより時間のかかるメーカー修理ではなく、気軽にトラクター・サプライで農耕具や農作業機械の修理・修繕を行う顧客が多く、トラクター・サプライの集客要素の一つとなっており、また追加購買・衝動買いの来店機会を増やすことが可能となっている。

③ 新商品の導入
「消費者の望む新たな商品を販売することが我々の仕事だ。」と、トラクター・サプライのCEO、グレッグ・サンドフォート氏(Mr. Greg Sandfort)は言う。
トラクター・サプライ各店舗では、常に3種類以上の新商品群をテスト商品として販売し、消費者のフィードバックを集めている。
そしてサンドフォート氏はさらに、「新商品群が大失敗でも構わない。テストは成功か失敗かを知るためのものなのだから。」と続ける。

④ ベンダーとの密接な関係
ベンダー、特に新規ベンダーとの密接な関係を持つ努力をしていることも、トラクター・サプライが成長している理由の一つと言える。
トラクター・サプライでは年に3回、「ベンダー・デイ」と言うものを設け、新規ベンダーや、将来のベンダーとの会議と交友を行っている。
「このことによって、我々はベンダーとの密接なパイプラインを持つことができる。」とサンドフォート氏は語る。

「今しかない、ここしかない、私しかない。いわゆるオンリーワン」の存在であるその商品構成。
店舗で最低限の農業器具修理・修繕をする便宜性(コンビニエンス・バリュー)。
失敗を恐れず、常に新しい商品ラインを消費者に提供する前向きな姿勢。
ベンダーを大切にし、共に成長していく姿勢。

これらの付加価値が、トラクター・サプライの成長の所以と言えるであろう。

(倉本)