今週のアメリカ食品業界はウォルマートとワイルド・オーツ共同の低価格オーガニック食材販売開始の話題に終始した。
ワシントン州に本拠地を持つ全米オーガニック・トレード協会 (U.S. Organic Trade Association) の最新データ発表によると、2012年度1年間アメリカでのオーガニック食材の売り上げは$315億ドル (約3兆1,500万円) に達し、前年比10.3%増となる。
2002年度の$84億ドルと比較すると、この10年強で3倍以上の成長率。
現在のアメリカ食品マーケット総売上高の4~5%を占めるものだ。
その巨大成長マーケットをウォルマートが見過ごすはずがない。
ワイルド・オーツ社との共同で、オーガニック食材の低価格訴求により、オーガニック食材マーケットに参戦した。(詳細は4月10日記事)
このウォルマートの低価格オーガニック食材販売に関して、今週一週間はいろいろなアナリスト、ビジネス誌から賛否両論が出され、喧々諤々とした論議がなされている。
(この3~4日間で筆者が読んだこの件に関する記事、コメント、分析だけでゆうに30は超える。)
いくつかの代表的意見を挙げると、
ウォールストリート・ジャーナル紙:
「高額オーガニック食材店舗は要注意。ウォルマートがオーガニック食材マーケットに殴り込み。」
マーケット・ワッチ (金融ビジネス情報サイト):
「ウォルマートとワイルドオーツが高額オーガニック食材マーケットを崩壊させる。」
さらに過激なものとしては、
フォーブズ誌:
「ホールフーズは要注意!? オーガニック・マーケットの価格設定が大きく下がる。」
反面、ウォルマート & ワイルドオーツの低価格オーガニック食材の進出に懐疑を持つ意見もある。
フォーチュン誌:
「オーガニック食材希望者は味の違いが大きく出るプロデュース (Produce = 野菜や果物の生鮮農作物) を欲しがる。現時点でのオーガニック 『ドライ』 フードで果たして消費者の目を引けるだろうか。」
リテイリング・トゥデイ (小売業分析情報会社):
「ウォルマートの顧客にはワイルドオーツのネームバリューはない。ワイルドオーツの名前さえ知らないため、ワイルドオーツのブランド力からくる相乗効果は期待できないだろう。2006年のオーガニック食材導入期と同様に、大きな成長は見られないのではないだろうか。」
プログレッシブ・グロッサー (食品スーパー情報会社):
「ウォルマート・スーパーセンターの SKU 150,000の中にワイルド・オーツ・マーケットプレース・ブランド商品 (低価格ドライ・オーガニック食材) が100種類前後置かれるだけでは、その商品を探すだけで大変なことになってしまう。果たして店内0.1%以下の商品を探す消費者が多くいるだろうか?」
また全く別の視点からの意見も出ており、センター・フォー・サイエンス・イン・パブリック・インテレスト (Center for Science in the Public Interest = 非営利健康擁護団体、ワシントン DC 本拠) によると、「ウォルマートの低価格オーガニック食材販売開始により、これまで難しかった低所得の消費者も健康に留意しやすくなるとともに、オーガニック食材とオーガニック農家が増えていくことに大きく貢献するだろう。」 と発表している。
ウォルマートの競合相手であるターゲットも正式コメントを発表し、「今後はターゲット・ナウ・ウィズ・フレッシュグロッサリ店舗 (ターゲット P フレッシュ店舗) でもオーガニック食材を増やしていく。また食材だけでなく、我々の差別化分野である HBA に関しても、オーガニック原料のみを使用したオーガニック HBA 商品を増やしていく。」 とコメントした。
ウォルマートとワイルドオーツの今回の動きが、ターゲットの新たな動向の引き金になったことは事実だ。
現時点でホールフーズ社はこの件に関する正式コメントを一切出していないが、何らかの対抗策は必要となって来るだろう。
(ホールフーズ社のコメントは非常に楽しみだ。)
ウォルマート & ワイルドオーツの低価格オーガニック食材の販売成績や消費者からの評価はマーケット動向を見つめていくしかないが、「改革なくして成長なし」 と言う言葉があるとおり、今回のウォルマートとワイルドオーツの低価格オーガニック食材がオーガニック食品業界、また食品業界全体に一石を投じたことは確かなこととなる。
この低価格オーガニック食品の動向は定期的に報告していく予定とする。
(倉本)