スプラウツ・ファーマーズ・マーケットの2013年度(2013年12月31日)経営成績が発表された。
(注: スプラウツの経営年度はカレンダー・イヤーで、1月1日から12月31日。)
数字を見てみると驚くほどの急成長を遂げている。
2013年度第4四半期の純利益は、2012年度第4四半期の$590万ドル(約5億9,000万円)から2倍弱アップの$930万ドル(約9億3,000万円)。
2013年度年間純利益も、2012年年間純利系の$1,950万ドル(19億5,000万円)から2.6倍以上の$5,130万ドル(約51億3,000万円)の急成長だ。
年間総売り上げを見ても、2012年度の17億9,480万ドル(約1,795億円)から
36%アップの$24億3,790万ドル(約2,438億円)となっている。
それではなぜスプラウツがこのように急成長(特に純利益の急成長)しているのだろうか。
一番はなんといっても「今しかない、ここしかない、私しかない。いわゆるオンリーワン」の差別化が成功している点だ。
英語では「差別化」を「ディフェレンシエーション(Differentiation)」と言うが、この英単語は Different(似ていない。異なっている。)から来ている。
つまり同業多店舗とは似ていない、違った店舗と言うことで、差別化が成功している。
・ 商品ラインが異なる
・ 店内レイアウトが異なる
商品ラインは健康志向、健康品質の商品を厳選しているし、店内1/3程の売り場をビタミン・サプリが占有している。
店内は透視度が高く開放的で、農場の青空市場(オープン・エア・マーケット)にいるような雰囲気から、生鮮野菜の新鮮さをさらに強調する。
また標準型スーパーのように生鮮野菜を入り口付近には陳列せず、店奥に配置。
店舗中央部分はバルク販売(量り売り)の(健康志向な)ナッツ、ドライフルーツ、穀類、オーガニックコーヒーを配置している。
(このバルク販売は利益率が非常に高いものだし、コーヒーも利益率が非常に高い。)
これは生鮮野菜・フルーツをマグネットとして消費者を店奥に誘導し、レジに向かう途中に利益率が非常に高いバルク販売商品を購入させると言う客導線となる。
第二のポイントは、同社が謳っている『Healthy Living for Less (健康な生活を低価格で)』に集約されている。
ここで注目しなければならないのは、まず「Less(低価格)」だ。
ホールフーズマーケットで代表される通り、「健康に良いものは高額」と思われる風潮が強い。
「ホールフーズで買い物をするとホールペイチック(給料全部)が掛かる」と皮肉られるくらいだ。実際に高額だが、それ以上に「高額」と言うイメージが消費者の頭の中に先行している。
そこで「健康に良いものを『低価格』で」と言う点が消費者の心をとらえた。
次に注意しなければならないのは、「Healthy Food(健康に良い食材)」ではなくて、「Healthy Living(健康な生活)」と言う点だ。
スプラウツでは自然食材、オーガニック食材を売るだけでなく、ビタミンやサプリも豊富で、「健康な毎日(生活)」を「低価格で」手に入れられると言う意味が込められており、成功に繋がっている。
第三のポイントは、ホールフーズマーケットとのカストマーサービスに対する差別化だろう。
ホールフーズはフレンドリーなカストマーサービスで定評がある。
それに対してスプラウツは「知識」で対抗するカストマーサービスを提供している。
ホールフーズで店員に何かを質問すると、非常に感じよく対応し、専門知識を持った店員を探してくれる。
それに対して(店舗が小さいと言うこともあるが)スプラウツでは、質問をした店員がその場で全ての専門知識での回答ができるカストマーサービスとしている。
スプラウツは2013年の「スーパーマーケット・ニュース・リテイル・エクセレント賞(Supermarket News Retail Excellence Award)」受賞したことも抵抗なく納得できる。
(倉本)